ナゼ太郎の部屋

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光学設計の基礎知識 難易度★★☆

光学設計とは

光学設計とは、レンズやミラーなどの光学部品を組み合わせて光学系を設計することです。
(「光学系」とはレンズやミラーを組み合わせた器具や装置の総称のこと)
例えば、カメラの画質向上や、レーザーの高出力化、製品の軽量化や小型化、省エネルギー化などの目的の機能・性能に応じて仕様を設定し、それを実現するためにレンズなどの光学部品の配置や形状を設計します。
光学設計は、「結像光学系」と「照明・集光光学系」の2種類に分類されます。これらは設計の目標や評価方法が少し異なります

光学設計 結像光学系(カメラ・顕微鏡)照明・集光光学系(LED光源・レーザー機器)

結像光学系

被写体を出発した光がイメージセンサーなどの像面に向かって収束して画像を生成するものです。
この時の像の鋭敏さ、コントラスト、歪みなどを評価して設計されます。
例えばカメラや顕微鏡などがあります。

照明・集光光学系

光源からの光を特定の方向に集光したり、広げたりすることによって、対象物に対して効率的かつ適切に光を照射するものです。
照明の均一性や照射方向や集光性などで評価されます。
例えばLED光源やレーザー機器などがあります。

光学設計のプロセス

  1. ① 目標の定義
    まず、使用目的に基づいて必要な光学的な仕様を定義します。
    結像光学系であれば焦点距離、像の明るさ、視野、分解能などの仕様が含まれ、照明・集光光学系であれば、照度、照度の分布、集光性、効率などの仕様が含まれます。
    その他、光学系のサイズ、使用する光源、撮像素子、使用する環境など用途によって、設計の目標を明確にします。
  2. ② 概要の設定
    必要な仕様を実現するためにはどのような光学部品が必要か、光学部品は何個くらい必要で、どれくらいのサイズで、どのように配置するかなどを考えて、光学設計ソフトに設定します。
    光学設計ソフトには結像状態や集光状態などの評価の目標値を設定します。
  3. ③ 光学部品の選択
    レンズの材質の選択、形状、曲率、厚さなどを調整して、必要な光学特性を達成するための最適なレンズを選択します。
    光学設計ソフトを用いて、目的の光学系の構成に近づけていきます。
  4. ④ 最適化
    光学設計ソフトを使用して、光線の伝播をシミュレートし、望ましい光学的な特性を最大化または最適化します。
    光学素子の材料や加工方法、加工精度、使用環境、周辺部品の機構設計などを考慮し、最終的な光学系の設計が仕様を満足するか、シミュレーションの正確性を確認しながら行います。
  5. ⑤ 試作検証
    試作を行い、試作品の性能を評価して仕様を満足するかを確認します。
    評価結果より設計の調整を行う場合があります。

構成する主な光学部品

  • レンズ
    レンズ
    レンズは光を屈折させて発散または集束させるための光学部品です。
    球面や平面を組み合わせた形か、用途によっては、球面ではない非球面レンズが用いられることがあります。
  • ミラー
    ミラー
    ミラーは光を反射させて光線の進行方向を制御する光学部品です。
    平面ミラー、球面ミラー、放物面ミラー、非球面ミラーなど多様な形状があり、光線の角度や集光、拡散を制御するために使用されます。
  • プリズム
    プリズム
    プリズムは光を屈折または反射させる光学要素です。
    プリズムを通過させて光の進行方向を変えたり、異なる波長の光を分散させたりする目的で使用します。一般に多角形の平面で光の透過や反射を起こさせ、三角プリズムやペンタプリズムなどさまざまな形状のプリズムがあります。
  • 光学フィルタ
    光学フィルタ
    光学フィルタは特定の波長範囲の光を通過させたり、特定の波長を遮断したりするために使用します。
    特定の波長を選択的に吸収させたり透過させたりするカラーフィルタやバンドパスフィルタ、透過する光の偏光を制限する偏光フィルタなどがあります。
  • ビームスプリッタ
    ビームスプリッタ
    ビームスプリッタは、入射光を2つまたはそれ以上にビームに分割する光学部品です。
    入射した光の一部は透過し、一部は反射するビームスプリッタの性質を持たせるために、誘電体多層膜や金属薄膜を施したプリズム形状あるいはプレート形状のものがあります。
  • 回折格子
    回折格子
    回折格子は平面または曲面に周期的な微細パターンを形成したもので、反射型と透過型の2種類があります。光の波長によって反射あるいは透過する角度が異なるため、波長の違いによって光を分離することができます。

レンズの種類

球面レンズ

球面レンズはレンズの両側が球面もしくは平面で構成されているもので、加工が容易なため、最も使われます。

  • 両凸レンズ
    両凸レンズ
  • 平凸レンズ
    平凸レンズ
  • 凸メニスカスレンズ
    凸メニスカスレンズ
  • 両凹レンズ
    両凹レンズ
  • 平凹レンズ
    平凹レンズ
  • 凹メニスカスレンズ
    凹メニスカスレンズ

非球面レンズ

球面レンズを使用する場合、球面収差が生じてしまいます。
球面収差とはレンズの中央部を通る光線と外周部を通る光線で、焦点を結ぶ位置がずれることをいいます。この収差が、結像性能や集光性能に悪影響となる問題があり、球面レンズによる収差を抑えるために複数枚の球面レンズを組み合わせて使用する方法がとられます。
非球面レンズは、球面ではない曲面によって収差を抑えることができるため、球面レンズを使用する枚数を減らして小型化、軽量化などの目的に利用されています。
非球面を1面ずつ加工すると高価になるため、精密な非球面金型でガラスやプラスチックを成形・転写する加工方法が一般的です。精密な非球面金型が高価であることや、非球面形状を精密に転写する成形加工の技術が必要で、球面レンズよりも高価になるデメリットもあります。

球面レンズと非球面レンズの収差の違い

その他

・直行する方向で異なる曲率の面を持つ「トロイダルレンズ」
・面がシリンダー(円筒)面の形状の「シリンドリカルレンズ」
・複数のレンズが配列された「レンズアレイ」
・複数の溝が施された板状の「フレネルレンズ」
・材料の屈折率分布を利用した「GRINレンズ」
さまざまな種類のレンズがあり、用途によって選びます。

レンズの材料

レンズの材料にはガラス、透明プラスチック、結晶材料などがあり、使用する光の波長、光の強度、使用環境などによって選びます。

可視光領域では、光学ガラス、石英ガラス、プラスチックなどを用いますが、赤外線用レンズとしてシリコンやゲルマニウムといった結晶材料が使われることがあります。
光学ガラスやプラスチックにはさまざまな種類があり、それぞれ光の波長に対する透過率、屈折率、分散(光の波長による屈折率の変化)、比重、機械的特性、熱的特性などが異なります。
光学ガラスは屈折率や分散のバリエーションが豊富で熱に強く、プラスチックは形状の自由度が高く、割れにくく、軽いというメリットがあります。

レンズのサイズ

レンズのサイズは使用用途や光学系の仕様によって決まります。
必要な光量、画像の倍率、必要な解像度などの光学的な要求と、光学系が配置されるスペースの制約や小型化&軽量化などのデザイン性、使用する材料によっても変わります。
例えば、内視鏡の先端に付ける対物レンズには直径の小さいレンズが必要ですし、高精細な像を得たい場合は大型のレンズが必要になります。
また、遠くのものを拡大して見たい場合は、焦点距離の長いレンズが必要で、光学系の全長は長くなります。
像を明るくしたい場合は、光学系に入る光を多くするためにレンズの直径が大きくなります。

光学設計の今後の重要性

光学設計には、レンズやミラー、プリズム、フィルタ、センサーといった一般的な光学要素のほか、ファイバーオプティクスなど特殊な光学デバイスも関連しています。
今後も科学、工学、医療、通信、産業、宇宙探査、エンターテインメントなど多くの分野で用途が拡大し、光学設計の重要性はさらに増していくでしょう。

画像品質の向上

優れた光学設計は、カメラや望遠鏡、顕微鏡、ビデオカメラ、スマートフォンカメラなどにおいて、鮮明で高品質な画像を取得するために重要です。
高性能な光学系を開発することで、解像度、コントラスト、色再現性を従来よりも改善し、写真や映像のクオリティを大幅に向上させます。

科学と研究

光学設計は、これまで多くの科学研究分野の発展に寄与してきました。望遠鏡は宇宙観測に不可欠であり、顕微鏡もまた細胞や微生物の研究に欠かせません。各種の光学システムが、科学的な観察や実験の基本的なツールとして今なお活用されており、将来の新たな発見や知識の獲得に貢献するでしょう。

医療機器

光学設計は医療分野においても非常に重要な役割を果たしています。
内視鏡や手術用レンズなどの光学的な医療機器が発展したことで、より正確な観察と負担の少ない手術を可能にしました。医療用光学システムの技術革新は、医者と患者の両方に大きな恩恵を与えているといえます。

通信技術

光ファイバー網の拡大にも光学設計が関わっています。全国における光ファイバー通信の整備率(世帯カバー率)は、2022年(令和4年)3月末時点で99.7%です。(総務省令和4年版情報通信白書より)高速かつ大容量のデータ伝送を可能にするインフラが整備され、国内通信ネットワークの効率を向上させています。

産業分野

産業分野では、レーザー加工や材料検査、3Dスキャニング、ロボットビジョンなど、製造プロセスや品質管理に精密な光学システムが必要です。
新技術の開発と光学設計の改善が進めば、生産効率の上昇や低コスト化、人員削減といった恩恵が得られるでしょう。

宇宙開発

宇宙探査機や天文観測装置などの性能は、搭載する光学系によって高められます。
宇宙状況把握(SSA)システムの光学望遠鏡、宇宙用光学リモートセンサなど、地球上での宇宙観測技術においても光学設計は重要です。

エンターテインメント産業

映画やテレビ、ゲームなどのエンターテインメント業界でも、光学設計は特殊効果や映像品質の向上に寄与しています。未来のアミューズメント施設では最先端の光学系を利用したアトラクションが提供され、これまでにない体験を楽しめるようになるでしょう。

ディスプレイ技術

現在のスマートフォン、テレビ、モニターなどのディスプレイ技術においても、光学設計は画質や視野角、反射防止などの向上に寄与しています。自動車のHUDやメガネ型のウェアラブルデバイスのような視覚拡張の新技術が普及するのも、それほど遠い未来のことではないかもしれません。

SUMITAは創業100年を超える光学ガラスメーカー
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